隠居生活は、思ったよりも安穏としたものではありませんでした
偽科学・珍学説読本より |
いつものように、娘と夫、3人で食卓を囲み、夕ごはん。
本日のメニューは、ヨーグルトで作るカレーです。
隠し味に入れたカイエンペパーのおかげで、なかなかスパイシーなお味に。
ふたりとも、喜んで完食してくれました。
コロナ禍と抗がん剤
変わりのないように見えますが、薬の投与が始まってから、夫の白血球と血小板の数値は、ずっと基準値を下回っています。
「抗がん剤治療の副作用でしょう。」
そうおっしゃりながら、治療の方針変更等のお話は、まだ主治医が口からだされたことはなく、このまま、タグリッソによる治療が継続できることに、ホッとします。
いつかは、このお薬の耐性がついて……。
そう考えると、胸がキュッと苦しくなってきます。
診察室では、本人より、心配性の家族の私のほうが、病人みたい😢
からだを横にして休むことは多くなってきたけれど、それはすべて、薬のせいというわけでもないでしょう。
退職、加齢、コロナ禍で外出を控える生活。
たぶん、病はなくても、衰えを、加速させるような日々を過ごしてきましたからね。
リターンとリスク
物事には、必ず両面があります。
抗がん剤もしかり。
がん細胞の増加を防いでくれるお薬ですが、残念ながら、血液を作る骨髄にも影響を与えてしまいます。
だから毎月、血液検査で、どのくらい影響を与えているのかを調べるのですね。
がん抑制と副作用、リターンがリスクよりも、勝っているからこそ、そちらを選んでいるわけです。
リスクが高くなれば、当然、違う選択をすることになります。
一番、大切なことは自分の生活を守ることだからです。
治療法も、効果も、副作用の表れ方も、100人いたら、100通り。
同じ病に同じ薬を使ったとしても、同じ結果にはなりません。
BB弾のようなこれ全部、がん?
検査で取り出した夫の肺の一部を見ずに、口頭で告げられていただけなら、夫に間違った提案をしていたかもしれません。
現実をこの目で見たことで、世間の持つ抗がん剤治療のイメージが、いかに偏ったものか、間違った情報が世に溢れているのかわかりました。
自分の信じたいほうに流されるのが人間だったりします。
だから、「○○が○○に効いた!」といった情報に魅力を感じてしまいます。
がんがある日突然消えてしまうことは絶対ない、とも言えないからです。
本屋さんの店頭で並ぶ本も、動画サイトやSNS上も、玉石混合な情報で溢れています。
私のような心配性には、先んじてブロックすることも、真剣に考えないといけないのかもしれません。
骨髄抑制とがん関連性疲労
これから、お話があるかもと思う問題です。
骨髄抑制
副作用で、血液細胞をつくる組織である骨髄の働きも抑制され、白血球・赤血球・血小板が減少し、いろいろな問題が起こります。
白血球が減ってくると、ウイルスや細菌に対する抵抗力が弱まり、感染症にかかりやすくなります。
赤血球が減ってくると、酸素を体中に運ぶ役目のヘモグロビンが減少し、貧血の症状が起こります。
血小板が減少すると、出血しやすくなり、出血が止まりにくくなります。
このような症状は、抗がん剤治療を行えば、避けては通れない副作用です。
血液の中身は、目に見えないから、血液検査で判断するしかありません。
日々の生活では、夫の自覚症状が、頼みの綱となります。
私に、自覚したことを共有してくれるようにお願いしたら、夫は、Trelloを利用し、記録を続けてくれています。
がん感染性疲労
米国National Comprehensive Cancer Network(NCCN)のガイドラインによると、がんに伴う全身倦怠感・疲労感(cancer-related fatigue)とは、「がんやがん治療に伴う永続的、主観的な疲れであり、肉体的、精神的、感情的な側面をもっている感覚で、エネルギーが少なくなっている状態」と定義されています。
しかし、夜9時になるとお布団に入り、昼寝も欠かせないなど、その疲労感は、横で見ている私にも伝わっています。
週に1度の通勤と時折の在宅ワーク。
仕事の時は、疲れを見せないから不思議です。
ただ、通勤した次の日には、横になる時間が増えています。
「がん患者の倦怠感を評価する質問票(CFS)」というものを見つけたので、夫が気分よさそうにしている時にやってもらおうと思います。
本人の生活を守るためには、本人のことが、家族に伝わっていないと始まりませんからね。
この先、深刻な話を受け止めなければならない時がくるかもしれません。
単に病がという話でもなく、生きていれば、誰にでも、いろいろなことが起こります。
老後生活って、終わりに向けての準備の期間。
隠居生活は、思ったよりも安穏としたものではなく、今までの人生の貯金、貯筋、ご縁がものを言ってくるのだと今更ながらに思うのでした。
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